競馬のスターターとは?発走の役割と平日の仕事・研修の道筋
こんにちは、馬爺(うまじい)です。
レース直前、ゲートの横で赤い旗を持って立つ人が映ります。馬の名前を追っていると、その人の仕事までは気に留めないかもしれませんね。旗が見え、馬が枠へ入り、扉が開く。その短い場面を支えるのが、スターターと周囲の担当者です。
競馬のスターターは、発走地点で馬の状態を確かめ、公正なスタートを担う発走委員です。JRAでは、ゲートを開ける操作だけを仕事として紹介していません。開催前の情報共有、馬や騎手への目配り、発走後の確認までがつながっています。
ここでは中央競馬を中心に、規程で定められた役割と、発走委員本人が取材で語った仕事を見ていきます。地方競馬の研修や働き方にも触れます。「特別な資格がいるの?」「レースのない日は何をするの?」という疑問にも、仕事内容と実際の経歴を分けて答えていきますよ。
この記事でわかること
- スターターとゲート周辺の係員の役割
- 赤旗・白旗と発走の合図の違い
- 平日の観察や記録が当日の仕事へつながる理由
- JRA職員から発走委員へ至る経歴の実例
競馬のスターターの役割と発走前後の仕事
まずは、発走前後の仕事を時間の流れに沿って見ていきましょう。朝の打合せ、馬の入場、枠入り、発走、その後の確認。台上に立つ人と馬の近くにいる人では、受け持つ作業が異なります。
スターターは発走地点の責任者
スターターは、競走を始める発走地点の責任者です。JRAの仕事紹介には、各馬の最後の状態を把握し、できるだけ不利なくスタートできるよう注意を払う仕事として載っています。大事なのは、全馬の状態を見て、発走させられるかを判断すること。操作する瞬間だけを見ていると、そこへ至る仕事が見えにくいのです。
正式な役割の名前は発走委員です。競馬施行規程では、競馬の開催に置かれる開催執務委員の一つとして挙げられ、第185条で発走に関する事務を担当すると定めています。
一方で、発走委員が競馬場のすべてを指揮しているわけではありません。開催執務委員には、着順の確定や制裁を扱う裁決委員、ゴールの到達順位やタイムを扱う決勝審判委員など、別の担当がいます。発走の責任者と、競走全体の裁決をする人は同じ役割ではありません。
(出典:JRA採用サイト「開催業務内容」)
ゲートへ誘導する人との違い
ゲートの近くには、馬を枠へ誘導する人もいます。この仕事は整馬と呼ばれ、JRAの専門技術職の業務紹介では、騎手や他の係員と連携しながら、慎重かつ機敏に馬を扱ってゲートへ入れる仕事と説明されています。
目の前の馬に直接働きかける整馬の係員と、発走地点で状態を確認し発走を判断する発走委員。どちらも発走に欠かせない働きですが、確認する位置や受け持つ作業が違います。馬を後ろから支えたり、入口へ向けたりする姿が映っても、その人をすべて台上のスターターと呼ぶと、仕事の分担が分かりにくくなります。
さらに、発走線の前方で白旗を持つ助手には、発走のやり直しを騎手へ知らせる役割があります。JRAの業務紹介でも、発走委員が振る赤旗を確認し、白旗を左右に振って知らせる仕事として紹介されています。
映像で人を見分ける手がかり
馬をゲートへ誘導する整馬、発走を判断する発走委員、やり直しを伝える白旗の助手。それぞれの作業を見ると、発走の分担がつかめます。

当日の打合せで共有する馬の情報
発走地点へ行って初めて、その馬をどう扱うか考えるわけではありません。2022年の佐伯光夫さんへの取材では、朝の打合せで整馬係と馬の癖や対応を確認する様子が紹介されています。馬に近づく人と、台上から発走を判断する人が、同じ情報を持って臨む準備です。
2015年の長島隆樹発走委員の説明にも、出走する馬ごとに記録を並べ替え、競走での癖や枠入りの様子について打合せをしてから臨む、という仕事が出てきます。平日に得た馬の情報を、当日の担当者へ渡すところまでが準備です。記録を残すだけでなく、その日の競走で使える形にして共有する。短い発走前の場面には、こうした準備がつながっています。
本馬場へ来た馬を確認する
馬が本馬場へ入ってきたら、確認するのは枠入りの様子だけではありません。佐伯さんへの2022年の取材では、馬装、騎手の帽色や服色を確かめ、騎手へ声を掛ける仕事が紹介されています。発走前には、扉を開けるテストも行うと説明しています。
馬が入場してからも、騎手だけの判断で自由に動けるわけではありません。JRAの競馬施行規程第106条は、審判台前では馬を常歩で歩かせ、集合の合図があれば速やかに発走地点へ集めることを定めています。ここでいう常歩は、走らずに歩くことです。入場した馬が発走地点へ向かうまでにも、決まった手順があるのですね。
同じ条文には、馬場に出た馬の口取りを行うときと、馬場に出た騎手が下馬するときに、発走委員の許可が必要だとあります。口取りは人が馬を引いて扱うこと、下馬は騎手が馬から降りることです。台上で扉を開けるだけでなく、入場後の人と馬の動きにも関わる役割が、規程から分かります。
枠へ入れる際にも、騎手は発走委員の指示に従います。本馬場入場から、集合、枠入り、発走へ。赤旗が映るより前から、この担当者が受け持つ仕事は始まっています。
(出典:JRA「競馬施行規程」第106条)
赤旗はスタートそのものではない
赤い旗が上がったから、その瞬間にレースが始まるわけではありません。JRAの用語辞典では、発走前に台上の発走委員が持つ赤旗は、発走態勢に入ったことを示すものと説明されています。
競走を始める発走の合図は、発馬機の前扉の開閉です。旗が見える、馬が枠へ入る、前扉が開く。この順に見ていくと、準備中の合図を発走そのものと取り違えにくくなります。
赤旗には、正しい発走ではないと判断された際に左右へ振って知らせる使い方もあります。発走前に台上で持っている赤旗と、やり直しを伝えるため左右へ振る赤旗。見るときは、色に加えて、使う場面と動きも手がかりになります。発走前の旗と、発走のやり直しを知らせる旗の動きは、一つの意味へまとめないことが大切です。

旗の色だけで決めず、馬が出る前か、出たあとかも一緒に見てみましょう。
全馬を見て発走を判断する
全馬が枠に入れば、あとは機械が自動で発走を決めるのでしょうか。長島隆樹さんは2015年の取材で、最後は自分の目で見て瞬時に判断すると語っています。発走の責任者として、目の前の馬を確認し、判断する人がいるのです。
JRAが紹介する発馬機には、全馬の枠入りが完了したことを、後方の発走委員から台上の発走委員へ伝える確認ランプがあります。後方からの合図と、台上の担当者自身による確認がつながっているのですね。
ランプの説明は、JRAがそのページで紹介する発馬機についてのものです。すべての競馬場の機器を同じ仕組みと決めつけず、ここでは人から人へ確認を伝える方法の一例として見ておきましょう。
発走を止める判断と裁決への連絡
公正な発走を担う仕事には、走らせる判断だけでなく、その競走から馬を除外する判断も含まれます。JRAの競馬施行規程第105条第2項では、事故や疾病で発走できない場合、著しい悪癖で発走を遅らせたり他馬へ危険を及ぼすおそれがある場合などを挙げています。
実際の除外例では、JRAは2026年6月20日の阪神6Rで、ジャジャミンが発馬機内で暴れ、両後肢挫創を発症したため競走除外となったと公表しています。発走前の判断を知る、一頭の具体例です。
同じ規程には、除外したときは裁決委員へ直ちに知らせることも定められています。発走地点で判断したことが、別の担当へ速やかに伝えられます。
また、第110条では、発走の合図前に利益を得ようとする行為や発走の遅延、合図を受けても発走させなかった場合など、騎手についての事項も裁決委員へ通知すると定めています。発走委員が報告することと、制裁などの裁決をすることは分けて考えます。
やり直しを伝える赤旗と白旗
発走委員が正しい発走ではないと認めた場合には、発走のやり直しがあります。JRAのルール解説は、発馬機の誤作動やフライング、外的な要因による支障などを挙げています。いつもより遅く枠を出た馬がいても、それだけでやり直しになる、とは読めません。ここで問題になるのは、発走が正しく行われたかという点です。
施行規程第109条の手順では、発走委員が赤旗を左右に振って示し、その合図を受けた前方の助手が白旗を左右へ振って騎手に伝えます。騎手は馬を発走地点へ再び集め、発走委員が改めて合図を行います。
(出典:JRA「競馬施行規程」第105条・第109条・第110条)

発走後の中止と不成立の担当
真正な発走の合図を受けても、発馬機の中で固まって動けなかったり、転倒したりして、決勝線まで走れない馬がいます。JRAのFAQでは、こうした状態も「競走中止」の例に入っています。扉が開いたあとに一頭が残る場面を見るときは、その馬の競走中止と、発走全体のやり直しを区別できます。
競走全体を不成立にする判断は、裁決委員が着順確定前に行います。JRAのルール解説は、災害や投石などで競走や執務に重大な支障が生じる場合を挙げています。発走委員が判断するのは、発走が真正だったかという点。裁決委員は競走全体の成立を扱い、判断する対象が異なります。
スタート後にも確認は続く
佐伯さんの2022年の説明には、ゲートを退避させ、走路に人や部品が残っていないかを確かめる仕事も出てきます。
2024年11月の取材で、月原隆司さんは、無事に発走したときに安堵することと、何かあれば即時対応を求められることを語っています。馬が走り出した瞬間、見ている私たちはレースへ目を向けます。一方、発走を担う人には、その後の確認や対応が残っています。
競馬のスターターの平日の仕事と就くまでの経路
レース当日の判断には、普段から馬を見てきた時間がつながっています。ここからは、レースのない日に何をするのか、どう経験を積んで担当するのかを見ていきます。JRAの本人取材と、NARが公表する研修・働き方を、所属や資料の年を分けてたどります。
平日の観察・記録と厩舎との連携
開催日だけ馬を見ている仕事ではありません。緒方一徳さんへの2012年の取材と、佐伯さんへの2022年の取材には、平日にゲート練習を見て、馬の癖を把握する仕事が出てきます。当日の枠入りで何に気を配るか、その前から馬を見ているのです。
観察したことは、記憶だけでなく記録にも残します。長島さんは2015年の取材で、競走や練習での様子を発走台帳へ記し、出走する馬ごとに並べ替えて打合せに使うと説明しました。朝の打合せに届く情報は、こうして普段の観察から蓄えられています。
同じ「入りたがらない」という様子でも、馬のしぐさや、その理由へ目を向けます。長島さんの2015年の取材では、枠入りを嫌がる馬をそうして見る仕事が紹介されています。月原隆司さんは2024年に、自分は小さな音にも気づける静かな地点がよいと語りました。これは月原さん自身の感じ方ですが、馬に気づくための目と耳の使い方が伝わってきます。
記録と合わせて、厩舎との相談もあります。長島さんの2015年の取材では、管理する馬を深く知る調教師と、たくさんの馬を見ている発走担当が、それぞれの経験を持ち寄ると説明されています。一方だけで決めるのでなく、馬を知る立場の違いを生かす相談です。
終わった競走の映像も、次の仕事へつながります。緒方さんは2012年の取材で、前週の発走映像を見て、気になった騎手へ助言する仕事を説明しています。長島さんも2015年に、映像の記録を次の練習や競走に使うと語りました。観察し、記録し、関係者と話し、次の発走に備える。平日の仕事は、このつながりの中にあります。

JRA職員から至る経歴の実例
JRAでは、どのような人が発走委員を担ってきたのでしょう。緒方さんは2012年の取材で、職員が部署で経験を積んで選ばれると説明しました。緒方さん自身には、競馬学校の教官を務めた経歴もあります。
佐伯さんへの2022年の取材には、馬事公苑、競馬学校、美浦と栗東のトレーニングセンターで経験を重ねた歩みが載っています。馬に関わる複数の職場で、仕事をしてきた本人の経歴です。
ただ、個人の経歴を、現在の全員に共通する選考順や必要年数へは置き換えません。緒方さんの取材は2012年、佐伯さんの取材は2022年です。何年勤めれば必ず選ばれる、特定の部署へ行けば担当になれる、といった約束を示す資料ではありません。
初めて台に立つ人を支えるもの
初めて発走台へ立つときの様子も、本人の取材から分かります。長島さんは2015年に、先輩が難しい馬の少ない競走を選んでくれたと振り返りました。後方からの合図にも、先輩の助けがあったそうです。
初担当の緊張を一人だけで引き受けた話ではなく、担当する競走の選び方や、周囲からの合図を通じた支えがあった話なのですね。朝に情報を共有し、後方と台上で確認をつなぐ仕事と、ここでも重なります。
これも長島さんの初担当時の実例です。いまの全員が同じ競走を任される、同じ手順で初日を迎えるという制度の説明にはしません。発走の判断を学ぶとき、先輩がどう支えていたかを知る材料です。
職種の資格と発走担当を混同しない
「スターターは獣医師なの?」という質問もあります。JRAの採用には、事務職、技術職、獣医職などの区分があり、獣医職の応募にはその職種の要件が示されています。ただ、その職種の条件を読んだだけで、スターター全員の必須資格が獣医師免許だと結論づけることはできません。
JRAの公式説明では、平日に所属部署で行う平常業務と、開催日に別の執務体制で行う開催業務が分かれています。採用される職種、普段の所属、開催日に担当する仕事は、同じ意味の言葉ではありません。
発走担当への経路を知りたいときは、採用情報だけでなく、本人の担当経験や開催業務の紹介も合わせて見ます。知りたいのは採用時の職種なのか、開催日に任される役割なのか。この違いを押さえて読むと、資格の話で迷いにくくなります。
地方で積む実地経験と研修
NARの公正部の業務紹介には、地方競馬場への裁決委員、決勝審判委員、発走委員の派遣と、開催執務委員を養成する研修が載っています。
NARが公開する2023年の職員座談会では、2022年採用のY.Sさんが、発走員としてゲート後方での整馬と、馬ごとの発走時の癖を記録する仕事を担当していると話しています。発走員として馬の近くで仕事をしながら、一人前の発走委員を目指していた若手職員の例です。
Y.Sさんが苦労したこととして挙げているのは、法規や実施規則の勉強です。主催者など外部の人と働く機会も一年目からあり、協会職員としての役割を意識するようになったと振り返っています。馬を扱う技能に加え、競走のルールと、別の組織の人と働く経験も積んでいたのですね。
地方での経験の積み方には、本人が語った例があります。ばんえい競馬の橋本学さんは、2022年の取材で、開催のない日の走路開放を通じて発走の仕事を少しずつ経験し、その後NARの施設で発走委員研修を受けたと話しました。研修施設では、早朝の馬の世話や乗馬も経験したそうです。馬を扱う現場と研修の両方を経た、橋本さん自身の歩みです。
ソリを引くばんえいでは、発走準備で見る道具も増えます。橋本学さんは2022年の取材で、ソリや用具、ゲートの作動と確認ランプを確かめると説明しました。ばんえい公式の2020年の紹介には、ソリの砂や土を落とし、亀裂や破損を確かめる点検が載っています。馬や騎手に加えて、引く道具も準備の対象になるのですね。
入会時の研修と発走の専門研修
NARの採用サイトでは、入会した職員の研修と、開催執務委員として技能を身につける研修を分けて紹介しています。最初の新人研修は約2週間。部署の業務を知り、職員としての基本的な姿勢や社会人としてのマナーを学びます。
地方競馬教養センターにも約10日間滞在します。騎手候補生の訓練を見学し、馬房での作業を経験し、競馬の実態への理解を深める内容が紹介されています。ここでは、入会した職員が協会の仕事を知るための学びが紹介されています。発走を専門に学ぶ研修とは、受ける目的を分けて読むところです。
一方、開催執務委員研修には、裁決、決勝審判、発走という専門分野があります。業務に初めて携わるときや、技能を高めるときに受ける研修として案内されています。協会へ入る段階で競馬の現場を知る学びと、担当業務の専門性を磨く学び。スターターを目指す経路を考えるなら、この二つを区別すると理解しやすいですね。
(出典:NAR採用サイト「キャリア・研修」)
研修会場と期間の具体例
発走委員の業務研修は、実際にはどこで行われているのでしょう。NARの2024年6月の会報には、その年度の第1回発走委員業務研修が記録されています。期間は6月18日から28日までの11日間で、受講者は4人でした。
場所として挙げられているのは、地方競馬教養センター、浦和競馬場、JRA東京競馬場です。教養センターだけでなく、地方と中央の競馬場も研修場所に含まれていた一例です。先ほどの入会直後の研修とは名前も対象も異なり、発走委員の業務を学ぶ研修として報告されています。
11日間という数字は、2024年度のその回に実施された研修の期間を表します。発走委員へ就くまでに必要な年数を示す数字ではありません。教養センターと競馬場にまたがって学ぶ、一回の具体例として受け取ると分かりやすいですね。
(出典:NAR会報・第494号「令和6年度研修実施状況」)
異動の経験と担当希望の伝え方
NARの採用サイトには、入会後おおむね10年の間に、2年から3年ごとの異動で3から4の部署を経験するキャリアの目安が載っています。その中で、なるべく公正部専門職を経験するという説明もあります。これは協会職員として経験を広げる案内で、発走委員へ任命されるまでの年数ではありません。
また、本人が担当したい業務を伝えるため、年に一度、人事異動の希望調査を行うと紹介されています。発走の仕事に関心を持った職員にも、希望を伝える仕組みがあるわけですね。ただし、希望調査そのものが担当への任命を約束する制度とは説明されていません。いくつもの部署を経験する仕組みと、希望を伝える仕組みを合わせて見ると、協会で働きながら担当業務への理解を深める道筋が見えてきます。
(出典:NAR採用サイト「キャリア・研修」)
地方競馬場へ出向く働き方
NARに所属する発走委員は、どこで働いているのでしょう。NARの公正部の専門職には、裁決委員、決勝審判委員、発走委員があります。採用サイトの職場紹介では、本部に所属しながら、月の大半を競馬場への出張で過ごす働き方を説明しています。一般的な内勤の職員と、競馬場で執務する専門職では、一日の過ごし方が異なるのです。
一つの開催単位の出張は、おおむね3日から5日。遠方の競馬場では宿泊を伴います。一方で、内勤中心の部署に所属し、公正部の専門職を併任する人には、月に一度ほど競馬場へ出向く働き方も紹介されています。この説明はNARの公正部の専門職についてのものなので、中央競馬の担当者へそのまま当てはめることはできません。
NARの2026年度の事業計画も、主催者からの要請に基づき、裁決、決勝審判、発走の専門職員を派遣し、主催者側の開催執務委員と連携する方針を示しています。地方競馬場へ出向く専門職員と、その場の開催を担う人が一緒に働く仕組みです。スターターの仕事を知るときは、馬への対応だけでなく、競馬場の人と連携する働き方も見えてきます。
(出典:NAR採用サイト「職場・文化」、令和8年度事業計画)
配置後も続く発走委員の研修
地方では、担当者を養成する研修に加え、配置後の経験者が学ぶ機会も報告されています。NARの令和6年度事業報告では、養成の業務別研修として発走委員研修を2回実施。一方、現場配置後の業務経験者のレベルアップを目的とする発走委員研修は1回でした。これは2024年度の実績で、二つの研修は対象が異なります。
さらに、NARの2026年度の事業計画には、学び方も示されています。主催者職員などを対象とする業務研修では、実務に結びつく内容や過去の事例に基づく対策を中心にする方針です。発走もその業務の一つです。過去の事例から対策を考え、実務へつなげる内容を計画しています。
協会の経験が浅い専門職員には、競馬場での実践的な研修を強化し、本部ではレースのライブ映像を使った研修を行う計画もあります。ここに書かれているのは、2026年度の計画です。先ほどの2024年度の実施回数とは、年度も資料の性格も違います。実施済みの回数と、当年度の研修方針を合わせて見ると、配置されたあとも経験に応じて学ぶ仕組みが分かります。
(出典:NAR「令和8年度事業計画」開催執務委員等の養成、訓練)

スターターについてよくある質問
Q1. スターターと発走委員は違いますか?
A. 競馬の発走地点の責任者をスターターと呼び、JRAの規程での役割は発走委員です。
Q2. 赤旗が上がるとレース開始ですか?
A. 発走前の赤旗は発走態勢を示します。実際の発走の合図は、発馬機の前扉の開閉です。
Q3. スターターは全員獣医師ですか?
A. JRAの採用職種と、開催日に担う発走委員という役割は別です。獣医職の応募条件だけでは、発走委員全員の資格要件は分かりません。
Q4. レースのない日にも仕事がありますか?
A. 本人取材では、馬の発走練習の観察、記録、厩舎との相談、発走映像を振り返る仕事が紹介されています。
Q5. 台上の人だけで発走を進めますか?
A. いいえ。馬の近くや後方で確認する人、白旗の助手など、周囲の担当者と連携して発走を進めます。
競馬のスターターを知って発走を見る
競馬のスターターは、発走地点で馬の状態を見て、公正なスタートへつなげる人です。レース前の旗やゲートの開放だけでなく、平日の観察、記録、相談が、その短い時間の仕事を支えています。
次の中継では、赤旗を持つ台上の人から、馬の近くや前方にいる人へ、少し目を移してみてください。馬がゲートへ来て、担当者の確認を経て、前扉が開く。その流れの中で、誰がどこを受け持っているかを一つ見つければ十分です。
私たちが競走を待つ時間にも、馬を見て、人へ伝えて、次の動きを判断する仕事があります。スターターという名前に仕事の中身が重なると、いつもの発走の場面も、少し違って見えてきますね。
